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第四章
〝研究室に泊まり込みしてます〟
〝お疲れ、大変だな〟
〝研究終わるまであと三日くらいこのままっぽいです〟
俺は、気がつくと毎日のように下田代とやり取りをするようになっていた。
家には二週間ほど行っていない。俺は仕事が忙しかったし、下田代も研究が大変なところらしい。
避けられているわけではなく、あくまで偶然だろうと思う。
「彼女すか、古津さん」
「いや、友達」
「最近ずっとラインしてますよねー」
「たまたまだろ」
「にやにやしちゃってー」
同僚にも笑われる始末だ。俺は一体どんな顔で下田代と連絡をしているというのだろうか。思わず顔を押さえる。
俺が忙しいのは本当だ。でも、無理をすれば行けないわけではなかった。それはわかっている。理由をつけて、後に伸ばしているのだ。
でも俺はともかく、下田代にそんな行動を取る理由はないはずだ。お互い何となく怖くて先延ばしにしているなんて、そんなわけはない。
「別に、そういうんじゃない」
何はともあれ仕事だ。下田代もちゃんと勉強をしているのだろうし、俺も社会人として恥ずかしくない姿を見せなければならない。
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