第四章

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 案の定、ビールを飲みながら部長の悪口や課長への不満に花が咲いた。楽しくないわけでもないけれど、とびきり刺激的というわけでもない。適当に話を続けて、だらだらとビールを飲み続ける。  俺は何となく携帯を見た。特に誰からの連絡もなかった。どうせ仮に、酒の勢いで下田代の家に行ったところで誰もいないのだ。  ――そうするつもりがあるわけじゃないけど。 「古屋お前は?」 「え、何が?」 「聞いてないのかよ。もしかしてマジで彼女できた?」  もし下田代と付き合うことになったら、こいつらに何と言って誤魔化すべきだろうか。相手は大学生だ、とだけ伝えたら面白い反応が見れそうだなと思う。 「いないって」  俺は笑いながら口にした。中身が半分くらいのビールジョッキを眺めながら、いつの間にか自分が、下田代に抱かれるその後を考えていることに気づく。まるでそうするのが当たり前かのように。  俺は社会人で、彼より年上で、今までずっと男としてそれなりに恥ずかしくない生き方をしてきたはずなのに、本当にそれでいいんだろうか。
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