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俺は十歳年下の男に翻弄されて、未知の世界に足を踏み入れた男に向けられる言葉じゃないと思う。この間の初体験の後は、それなりに体に違和感が残って大変だったのだ。
下田代はなぜか、その何の変哲もないパンの写真を携帯で撮った。
「どうすんだ、そんなもの撮って」
俺は下田代が写真を撮るのを初めて見た気がする。俺を縛ったときに彼が携帯を取り出すことはなかった。緊縛したりする人は、むしろそういう行為の最中に撮影をしたりするイメージがあるけれど違うのだろうか。
あくまで彼が撮ったのは、誰でも目にしてすぐに忘れてしまうような、ただのクリームパンだった。
「記念すよ。いただきます」
そう言って下田代はやっとパンに口をつける。
俺も残りのパンを口に入れて、持っていたコーヒーのペットボトルを下田代の方に差し出した。よく晴れた日で公園は心地よかった。植えられた桜のつぼみが、わずかにほころんでいるのが見える。
子どもが走り回り、奇声を上げている。俺と下田代はしばらく喋ることもなく、そうやって二人でベンチに座っていた。
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