平成生まれ 180829

　「掴まえましたよ」
　言いながら、木俣君が帰ってきました。満面の笑みです。彼は蛙を掴まえるのが得意でした。
　「杉山さん、今度は食べていいっすよ」
　今日二匹目の蛙でした。まだ生きている蛙を木俣君の手から受け取ると、足から口に入れました。少し生臭いというか土臭い味がします。でも文句は言っていられません。蛙は貴重な蛋白源です。ヌメっとした触感が口に広がります。これを乗り越えれば食べられます。パリパリと足の骨を噛み砕いて。なかなかいけるんです。その頃何日か雨が降りまして、空き缶に水を貯めることもできていました。これでまた何日か生き延びられる。そう思ったのを覚えています。

　「しかしこれ、どう思います？　本当ですかね？　それとも罠？」
　数日前、雑誌を拾ったのです。アメ公の雑誌だと思います。密林に落ちていました。
　表紙にあった写真にびっくりしました。Shiranui-lakeと記された池で、ボートに乗る男女の写真です。一人は米兵の恐らく将校で、もう一人は日本の若い女性でした。それがアメリカではなく、日本の、東京の風景なのです。あまりにびっくりして、それからずっと二人の間でその話で持ち切りになりました。