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迷子センター 180908
「迷子の、お知らせです」
ゆっくりと読み上げる。
「二歳くらいの男の子が、迷子になっています」
さっきまで泣きじゃくっていた涙を必死にこらえて、私の手をぎゅっと掴む男の子。
「お心当たりの方は、迷子センターまでお越しください」
男の子の手をぎゅっと握り返す。
「大丈夫、大丈夫だからね」
晴天の五月五日。子供の日。
ゴールデンウィーク真っ最中。桐ヶ丘遊園地は家族連れでごった返していた。
気付いたら迷子になってしまっていたのだろう。びーびー泣きながら連れてこられた男の子は、まだ自分で名前を言うこともできなかった。
二歳くらいだろうか。白地に黄色のツナギ。青い帽子。まだオムツが取れていない。
「大丈夫よ、もう放送したからね、お母さん来てくれるかな、お父さんかな」
涙と鼻水をティッシュで拭ってあげる。
「クッキー食べる? クジラさんのクッキーがあるんだよー、ほら」
渡すと、ようやく不安顔ではなくなった。
もぐもぐと口に運ぶ。かわいい。
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