出会い

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 もしもね、ぼくがこのこうえんのお花の名まえをぜんぶ言えたらね、友だちになってくれる?  公園の花壇をただのんびりと眺めることが好きだった私に話し掛けた男の子が言った言葉だ。当時の自分の周囲にいた男児の殆どが花などに目もくれず、サッカーや鬼ごっこをして花壇を荒らす暴君ばかりであったため、私は当然警戒した。  「どうせ言えっこない」。  からかわれているだけだろうと思った私はイジワルのつもりで花壇に植えてある花の名前を言うように告げた。その予想は裏切られ、私は彼の口から飛び出す数々の花の名前を聞くたびに瞳がだんだん開く感覚を実感す……ることもなく、案の定、彼は保育園児の知っている限りの花の名前を当てずっぽうに言うだけだった。でも、彼は諦めることなく、頑張って覚えてくるねと言って去って行った。  遠くなる背中を見送りながら、私にとってその男の子は他の男の子と何かが違うということだけよくわかった。何かの意味は、自分でもよくわからない。
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