序章

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アステア歴4212年  ザザーン……  ザザーン……  ここは、ランドル王国領に存在する海辺の村“サザンローグ”。  祖父と一緒に夜の浜辺へ散歩に訪れた4歳ぐらいの少年が、光る玉を発見したようだ。 「おじいちゃーん! 見てみて! さっきあそこで光る玉を見つけたよ!」 「おぉ、これはメモリースフィアじゃな。わしらが住むこの世界“アステア”の意思が過去の記憶を映像として残している不思議な玉じゃ」 「過去の記憶?」 「そうじゃ。過去に起こった出来事を世界が記憶して、それが映像として残るのじゃよ。どれ、わしに見せてみなさい」  そう言って、老人は少年からメモリースフィアを受け取り、覗き込むように玉を眺めた。 「どうやら、これは3722年頃の映像のようじゃ。今からおよそ490年前……魔王によって世界が混沌の渦中を彷徨っていた頃の記憶じゃな」 「こんとんのかちゅう?」 「魔王が人々を苦しめていた頃の記憶ということじゃよ」 「その魔王はどうなったの?」 「言い伝えによれば、光の勇者“アレフ”と英知の賢者“レイナ”が魔王と相打ちになって、何とか打ち倒すことが出来たという。相打ちだったから勇者も賢者も死んでしまったが、そのおかげで魔王も倒すことが出来たということじゃ。今、わしらがこうして平和に暮らせているのも勇者アレフたちの功績によるものだということじゃよ」 「ふーん。じゃあ、その玉には勇者が魔王を倒したときの記憶が残ってるの?」 「そのようじゃな。少し映像を見てみるとするかのう」  そう言って老人が不思議な呪文を唱えると、メモリースフィアの中に過去の映像が浮かび上がってくる。
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