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「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「レイナー!」
「いやぁぁぁぁぁぁ! 痛い! 痛いぃぃぃぃぃぃ!」
「レイナ! しっかりしてくれ! レイナー!」
魔王の魔法を喰らってしまった賢者は、放心状態となってピクリとも動かなくなってしまった。
しかし、外傷は全くない。血も出てなければ傷口すら全く付いていない状態だ。
「貴様ぁ……レイナに何をしたぁ!?」
「過去に多くの人間が受けた痛みの記憶を頭に流し込んだのだ。痛みの記憶だけだから外傷はないが、脳が痛みに耐え切れずショック死してしまったようだがね」
「許さない……絶対に許さない!」
「安心しろ。貴様もすぐに賢者の後を追わせてやる」
「うぉぉぉぉぉぉ!」
我を忘れて振るった剣は魔王にかすりもせず、勇者のスタミナだけが消費されていく。
「はぁ……はぁ……」
「もう終わりのようだな」
「く……みんな……ごめん……世界を……救えなそうだ……」
「死ぬ前に良いことを教えてやろう。貴様を殺した後は、我が世界を平和にしてやろう」
「ふざ……けるなぁ! 世界を支配しようとしてる魔王の言葉なんか……信じられるか!」
「世界の支配……か。やはり貴様は何も知らないのだな。今、楽にしてやろう」
「ち……ちくしょう……」
「無知な勇者よ……滅びるが良い」
「…………」
――――――――――――
メモリースフィアの映像を見た老人が驚愕の事実を知り、目を見開きながら冷や汗をかいて戸惑っている。
「こ……これは……どういうことじゃ……?」
「おじいちゃん、勇者……負けちゃったの?」
「そ……そのようじゃが……これは一体……」
気付けば辺りはすっかりと暗くなっており、波の音だけが響き渡っていた。
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