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表紙がパタンと開き、ページがパラパラと高速で捲られた。
そして読みかけの栞を探すようにピタッと羽根のページで止まった。まるで手品師がトランプを切ってストップと言わせたみたいだ。
遊飛はその紙の擦れる音で上半身を起こしてベッドから見て驚いている。
そしてその羽根がプルプルと震えて動き、ゆっくりと浮上した。
「まさか、佳乃子?」
ドアに隠れて、佳乃子が動かしたのかと一瞬思ったが、試験中にそんな真似をするタイプではない。
遊飛は少し考えてから、ベッドから起き上がると側に掛けてあった赤いパーカーをTシャツの上に着た。
枕元に置いてあったiPhoneも手に取る。
遊飛の身長は167cm。高い方ではないが引き締まった体型をしていた。髪は少し茶系で目鼻立ちもはっきりしているのでよくハーフに間違えられた。服装はパリクールの練習もありダブっとしたジャージ系を好んで着ている。
羽根は宙に浮くと遊飛の方へ飛んできたが、クルッと回ってドアの方へ向かった。
それで遊飛は慌てて羽根に触れないようにドアを開けてやった。
「どうぞ~」
レディーファーストのように丁重に送り出し、その後をついて行く。
羽根は遊飛の目線の少し下をキープするように浮かんでから、通路をゆっくりとしたスピードで飛んで行く。
「どこへ行くつもりだ?」
遊飛はそれが自分を誘っていると、この不思議な現象を楽しんだ。
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