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「そうだ。僕が飛ばしてることにしてくれないか?」
遊飛は微笑みながら羽根にそう問いかける。
「そしたら生意気な佳乃子をギャフンと言わせられんだぜ」
羽根はもちろん何も答えなかったが、遊飛をエスコートしている事に違いはない。
階段では下を向き、ドアがあれば遊飛が開けるのを空中で静止して待っている。
遊飛はiPhoneでソウルミュージックを流して、踊りながら羽根を追いかけた。軽くステップを踏み、サッカーのブラジル体操もアレンジして足を振り上げる。
階段は三段跳びで降りて羽根を飛び越して一回転して着地すると、その進行を妨げないように通路の端に寄って見送った。
そして羽根は一階の左右の曲がり角で停止すると、コンパスの針のように45度回転して左を指し示し、突き当たりの1番奥の部屋へと進んだ。
遊飛は納得したようにジャンプして壁に片足をついて曲がると、長い通路を小走りに進み先回りしてミュージックを止め、部屋の前で深呼吸をしてからドアをノックした。
そこは伯父・鳥居和樹の書斎である。
そしてドアを開けると、伯父さんと佳乃子が驚いた表情でこっちに振り向いた。遊飛はそれで一瞬戸惑ったが、何事も無かったように笑顔で挨拶して飛んで来た羽根を紹介する。
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