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アフタヌーン・ティータイム
「失礼します」
遊飛はそう言って出入り口に立って羽根を書斎に招き入れた。羽根はタイミングを合わせるように、遊飛が上げた手の先まで飛んで来て空中で静止する。
しかし、佳乃子も伯父さんもそれに驚いた素振りは無い。
「遊飛くん。ドアを閉めて中へ入りなさい」
「遅かったわね」
「えっ?」
遊飛は期待していた対応ではなかったので複雑な気分で溜息をつく。
『佳乃子先生もいたんだ?丁度良かった、ほら羽根を連れて来たんだぜ』と、次のセリフも用意してあったのだが必要なくなり心の隅へ押しやった。
伯父・和樹は老眼鏡を掛け、拡大鏡まで用意して神妙な表情をして木製の大きなデスクに着き、佳乃子はその横で唇を指で摘みながら考え事をしている。
遊飛は訳も分からず、ドアを閉めて宙に浮かんでいる羽根と一緒に書斎に入った。中央には黒い革張りのソファーとテーブルがあり、周囲の壁には図書館のように本棚が並んでいる。
「えーと、羽根は見えてますよね?」
遊飛はそれを指差してソファに座ろうとしたが、佳乃子は素っ気なく見ただけでテストの終わりを告げた。
「遊飛。もうそれどころじゃないのよ」
まるで佳乃子も伯父さんも羽根がここに来る事を想定していたのか、宙に浮かんでいた羽根は佳乃子と伯父の居るデスクの方へ向かう。
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