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「まるでパスワードね?」
羽根もその英文字を偉そうに空中から眺めて揺れ動いている。
叔父さんは何か思い当たる事があるのか、目頭を押さえて考え込んでいた。
[N F S T O R D A ]
それを最初見た時、『ネストラダ』と読めそうだと思ったが、でも綴りが違うなと、遊飛はクッキーに手を伸ばして口に入れて微笑む。
『いくら何でもそんな単純な訳がないな』
しかし砂糖の甘さと紅茶の香りが口の中いっぱいに広がった時、また閃いた。
「伯母さん。さっき何か言いましたよね?」
「ああ、パスワードですか?」
「違う。もっと前です。紅茶を入れる前。闇の迷宮で父が何か書いている事についてです」
「なんで伝言ゲームなんかしてるのって聞いたこと?」
佳乃子がそれを思い出して教えてくれた。
「それだ。僕は幼い頃に父と言葉当てゲームをやってました。その文字、バラバラにした感じがしないか?」
遊飛はあの事件の日も、夕食後にリビングの暖炉の前でそのゲームを父としたのを思い出した。
それは文字をバラバラに並べて、それが何の単語か当てるゲームだった。
「言葉当てゲーム?」
そう聞き返して、佳乃子がメガネの中の瞳を輝かせ、その文字をジーッと見つめた。そして頭の中で文字を組み合わせてすぐに答えを弾き出す。
「STANFORDよ!」
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