序章・空の翳り

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 そのまま黒い雲から逃れるように低空を飛んで、山あいにある深い谷を抜け、岩壁の下にあるシダの生い茂る森の中で降ろされた。  その時、シダの葉に寝転がって涙目で見上げた夜空には、優しい光りに包まれた大きな鷹が翼を広げて宙に浮かんでいた。  それは少し僕を見降ろしてから、瞬く間に飛び去ってしまった。  僕は意識の薄れていく中で、子供ながらにそれが父のイメージだと思ったのである。  そして一本の羽根がひらひらと僕の側に落ちて来た。 『父のプレゼント?』  翌日、僕は伯父さんが連絡した救助隊に助けられ、ヘリコプターで病院まで運ばれた。そしてそのあと家が地割れと土石流が発生して地中に埋もれたと警察から知らされ、悲しみと困惑で再度涙した。  その災害により母が亡くなり、父は地中に埋まったまま遺体が見つかってない。そして僕が助かったのは奇跡だと告げられた。  しかし伯父さんの説明は少し違っていて、父は『闇の迷宮』に姿を消す前に僕の居場所を教え、息子を伯父さんに預かって欲しいと頼みに来たと言った。  あの悪夢のような出来事は幻ではなく、僕はまたあの地中に蠢く者に狙われ襲われる危険性があると、伯父さんは眉間に皺を寄せて話した。  どちらにしても母は死に、父は行方不明となり、僕はひとりぼっちになって伯父さんの家に住むしかなかったのである……。
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