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墓参り
その日、遊飛は不思議な感覚で緑に溢れた小道を歩いていた。枝葉から漏れる陽射しがチクチクと心を刺し、瞳の奥に光の眩しさが影を落として通り過ぎて行く。
その押し潰されそうな虚しい青空から逃げ出したかった。
「ユウヒ」
遅れてしまった幼い遊飛をいとこの佳乃子が冷たい視線を向けて呼んだ。
「しっかり歩きな」
「わかってる」
遊飛は小声で呟いて、石ころにつまずきながらヨロヨロと追いかけた。前には喪服を着た親戚の伯父さんと伯母さん、それに三歳年上の生意気な佳乃子がいる。
その行き先は小道の奥にある墓地。
そこに竹林に囲まれた鷹野家の墓石がある。意味は不明だが、その名の上には三本足の八咫烏が刻まれていた。
「なんか、空が重く感じるな?」
「嫌だ、いい天気じゃないですか」
伯父さんと伯母さんがそんな会話をして空を見上げた。薄っぺらい黒い影のような鳥がさっきから飛んでいるのを知らないのだろうか?
「ここもバレてんのさ」
十歳になったばかりの佳乃子が大人びた表情でざっくりと説明した。可愛いのに頬がぴくっと引きつると、メガネが少しズレて上目遣いで睨むのでちょっと怖い。
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