あかし★

1/3
前へ
/40ページ
次へ

あかし★

 ふと壁掛け時計に目をやると、九時を過ぎていた。頭がぼやけて、一瞬朝なのか夜なのかも分からなかったが、カーテンの隙間から差しこむ光が朝を告げている。  福島は左手で目をこすった。右腕はアズマの枕になっており、動かせない。いつの間にベッドに移動したのか、それすらよく覚えていなかった。二人とも一糸まとわぬ姿で、なにもかけず身体を絡ませあっているということは、行為の最中に寝てしまったのかも知れない。  ただれた朝。何度身体を繋ぎあったのか。なにも考えずセックスに没頭したかったのは、二人とも同じだったらしい。こんな時にと思っても、止められなかった。  鼻をつく、情事の名残。べたつく肌。眠るアズマはうっすら笑みを浮かべ、口元に乾いた白いものがこびりついている。  そのかさついた唇に、やはりかさついている唇をそっと重ねる。舌で唇を割ろうとすると、唇が開いて舌が絡んできた。ドキリとすると同時に遠慮はいらないと分かり、アズマの唇を貪る。 「止まんなくなっちゃったね」  息を弾ませながら、アズマは福島の右手を自分の最奥へと導く。すげえ、と思わず福島はうめくように言った。何度も福島を受け入れたそこは、待ち構えていたかのようにするりと指を飲みこみ、締めつける。 「さすがの俺でも、こんなになるまでヤったことないよ」  アズマも完全に理性のたがが外れているようだ。福島の指で自慰をするかのように腰を揺らし、つややかな吐息を漏らす。 「ねえ、これなら大丈夫だからバックで突いてよ」  指に絡みついてくるアズマの内部に、福島は目がくらんだ。今はただ、快楽に溺れていたい。いつもどこかで冷静な自分も捨てたい。 「ほら、早く」  少しかすれた、アズマの声。指を抜くと、アズマが小さくせつなげな声を上げた。枕の横にいくつか転がる空のパッケージを手で払って床に落とし、未開封のゴムをつまみ上げる。ゴムをつけ、うつ伏せで待っているアズマの身体をゆっくり貫く。 「ああっ……!」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加