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「ああ……も、無理っ……!」
福島はぐっと腰を突き上げ、アズマの内部のより深い場所で達した。同時にアズマも身体をひくつかせ、喉の奥でくぐもった声を上げて吐情する。
「……死んじまう、って思うぐらいよかった」
枕に顔を埋め、ぼんやりつぶやくアズマ。身体を繋ぎあわせたまま後ろからそっと福島が覆いかぶさってくると、顔の横に置かれた福島の手に手を重ね、ぎゅっと握った。
「生きてるから、死んじまうって思えるんだよな。って、当たり前すぎてなんなんだ、って感じだけど」
アズマがわずかに笑い、髪が福島の頬をくすぐる。なんとなくだが、福島にもアズマが言いたいことが分かるような気がした。
きのうの夕方から今まで、時にまどろみながら情事にふけった身体はさすがに汗くさく、唾液や精液の匂いも混じりあっている。これも生きている証だ。
「シャワー浴びようか」
興奮が鎮まり、二人の身体を繋いでいたモノが自然に抜けると、福島はゴムを始末しながら言った。
「うん、さすがにシーツも替えたいね」
アズマも起き上がり、乱れた髪を撫でつける。あちこちに体液のしみができているシーツ。ベッドの下にはティッシュやゴムのパッケージが散らかっている。ひどい有様に、福島は苦笑しながら頭をかいた。
シャワーを浴び、シーツを替え、ゴミを片づける。きのうからろくに食べていないから、腹ごしらえもしよう。それから、スマートフォンの電源を入れて現実に立ち向かおう。
病院にいる坂上と、ニュースを見てショックを受けるだろうファンのことを思うと、胸が痛む。それでも、人生を歩んで行かなければならない。
一糸まとわぬ姿のまま、アズマがベッドの脇のカーテンを開けた。光が部屋になだれこみ、白く細い裸体が光に縁取られる。
まぶしさに一瞬顔をしかめた福島は、光の中にさっきまでの情事などなかったかのような、穏やかなアズマの横顔を見た。
END
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