音漏れ 180917

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 その夜。  僕達は夫婦の営みをした。ここのところご無沙汰だった。  ベッドで奈緒美の髪に触れると、奈緒美が僕の腕の中に来てくれた。心なしか瞳が潤っている。  僕は興奮した。いいかんじだ。奈緒美が色っぽい。いつになく。たまらない。これはたまらない。  そして僕達はくんずほぐれつの後、珍しく二人同時に頂点を迎えることができた。溢れてくる歓び。奈緒美が上から抱き着いてくる。荒い息。愛おしい。抱きしめる。幸せだ。愛おしい。幸せだ。僕は幸せだ。  と思ったその瞬間。  ベルの音。鳴っている。  隣の部屋。  電話。家の電話のベル。鳴っている。  居間で鳴っている。  放っといていいよ、という意味を込めて、僕は更に奈緒美の頭を抱きしめた。  奈緒美が首を振る。  「だめ。健太郎が起きちゃう」  僕の腕をするりと抜け出すと、奈緒美が裸のまま居間へ向かった。  誰だろう。こんな時間に。  思っていると奈緒美が帰ってきた。  「誰から?」  「わかんない。切れちゃった」  「なんだそれ。変な電話。後味悪」  ベッドに入って、僕達はそのまま朝まで眠った。  いつの間にか背中合わせになっていた。  迎えた明くる朝、改めて電話機を確かめて、奈緒美が言った。  「昨日の電話、寺田さんだと思う」  「どうして?」  「だって、先回かかってきた電話と番号が同じなの」
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