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その夜。
僕達は夫婦の営みをした。ここのところご無沙汰だった。
ベッドで奈緒美の髪に触れると、奈緒美が僕の腕の中に来てくれた。心なしか瞳が潤っている。
僕は興奮した。いいかんじだ。奈緒美が色っぽい。いつになく。たまらない。これはたまらない。
そして僕達はくんずほぐれつの後、珍しく二人同時に頂点を迎えることができた。溢れてくる歓び。奈緒美が上から抱き着いてくる。荒い息。愛おしい。抱きしめる。幸せだ。愛おしい。幸せだ。僕は幸せだ。
と思ったその瞬間。
ベルの音。鳴っている。
隣の部屋。
電話。家の電話のベル。鳴っている。
居間で鳴っている。
放っといていいよ、という意味を込めて、僕は更に奈緒美の頭を抱きしめた。
奈緒美が首を振る。
「だめ。健太郎が起きちゃう」
僕の腕をするりと抜け出すと、奈緒美が裸のまま居間へ向かった。
誰だろう。こんな時間に。
思っていると奈緒美が帰ってきた。
「誰から?」
「わかんない。切れちゃった」
「なんだそれ。変な電話。後味悪」
ベッドに入って、僕達はそのまま朝まで眠った。
いつの間にか背中合わせになっていた。
迎えた明くる朝、改めて電話機を確かめて、奈緒美が言った。
「昨日の電話、寺田さんだと思う」
「どうして?」
「だって、先回かかってきた電話と番号が同じなの」
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