音漏れ 180917

4/7

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 それから、僕達は思い出さないようにしていた。電話のこと。無かったかのように。話題にも出さなかった。セックスもしなかった。僕達にはできない。これ以上できない。何もできない。考えられない。これ以上考えられない。何も考えられない。考えたくない。  一週間が過ぎ、二週間が過ぎた。  どうしたらいいだろう。どうすべきか。  深刻な主をよそに、なんとかしてくれと訴えかけてくる僕の下腹部。  しかし。どうしろというのか。奈緒美を外に連れ出すか。健太郎も? または。外注か。外注で済ますか。待て。それは浮気だ。  ベッドの中で悶々としていると、手が伸びてきた。奈緒美の手。びっくりしていると、大丈夫よ、という笑顔。  し・て・あ・げ・る。  声に出さずに、奈緒美の唇が動く。  奈緒美。ああ。女神様。僕の女神様。  でも。でも、だ。待ってくれ奈緒美。大丈夫だ。そこまでしてくれなくても。僕は大丈夫だ。我慢できる。だって。だって君だって我慢してるじゃないか。だ・い・じょ・う・ぶ。僕は無言で口を動かした。そして奈緒美にチュッとキスをする。眠ろう。今夜は抱き合って眠ろう。寝室の明かりを消した。  そこで、電話が鳴った。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加