抜擢 180921

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抜擢 180921

準備は万端だ。俺のジャンプ力は優に20mを超える。ここから8mのジャンプ。完遂してみせる。先回は。先回はうまくいかなかった。本部からのエマージェンシーコントロール。そんなもの知らなかったからだ。俺は25mの高さの三陸リアス式海岸の崖から海に身を投じたのだ。しかし。そのエマージェンシーコントロールとやらにしてやられた。海岸の岩に激突する手前で俺の身体は本部からコントロールされ、ヒラリと岩に降り立った。ヒラリと。滑稽だ。全く持って滑稽。死ねない。俺は死ねない。猛(たけし)君、君には億単位の投資がかかっているんだ。わかるね? 緑川博士がしたり顔でほざく。しらねえよ。そんなものはしらねえ。お前らが勝手に投資しただけだ。俺は頼んでねえ。一回も頼んでねえ。だいたい。だいたい俺は。俺はもうとっくに死んでる筈だったんだ。俺はルリ子と。ルリ子と死ぬ筈だった。死ぬ筈だったんだがルリ子が死ぬのやめたっていうから。死ぬのやめたっていうからああああ。だから俺は。だから俺は仕方なく一人で。一人でダンプに轢かれたんじゃないかあああ。それを何だ。それを何だよ。瀕死の重傷を負った本郷猛君を救った。だと? しらねえよ。改造人間? は? なにそれ? 働け? は? 正義の味方として? は? しらねえ。俺は一切しらねえ。頼んでねえし。俺は頼んでねえし。一切契約もしてねえ。
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