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「死因は何だったのですか?」
苦しんで死んだのか、俺は気になった。
「乳癌だったのね。気が付いた時にはもう手遅れと言われてね・・・。それでもずっと日記は書いていたから、うちに帰って読んで下さい」
鼻をすすりながら土下座をするお義母さん。
「はい。読ませて頂きます。早紀の最期はどうでした?」
「え?」
「最期です・・・。安らかに逝きましたか」
お義母さんは小さく何度も頷いて、
「ええ、それは安らかに・・・。それだけが救いでした・・・」
と小刻みに震えた。
「よかった・・・」
俺は涙が溢れ出した。本当に心から良かったと思った。
「何か・・・言い残していましたか?」
「ええ。本人が一番分かっていること・・・。あの日捨てたものの代償は大きかったって。だからこれで少しでも埋めさせてくれって・・・」
と言うとお義母さんは立ち上がって、箪笥の小引き出しの奥をガサガサと何やら手探りしている。
「これです」
と通帳とカードを差し出した。
「これは必ず良介さんに渡してくれって・・・」
「通帳・・・?」
「はい。それでお葬式が落ち着いたら良介さんを呼ぼうと思って連絡をしたんです。これだけは渡さなきゃいけないと・・・」
俺はそれを開いた。
「はっ、こんなに・・・! どうやって・・・」
「ずっと、ずっと、少しずつ、少しずつ貯めていたらしいです。芽衣ちゃんのために使ってくれと・・・」
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