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少し時間を要したが、結局佐野は離婚して早紀と籍を入れた。
引越しの日、早紀と最後に話をした。
「君の幸せを考えて最善の策を尽くした。もう俺のことは気にしないでくれ。芽衣はちゃんと育てるから安心してよ・・・」
心にもないことを言っただけだった。佐野が幸せになど出来るはずが無いことは最初から分かっていた。また同じことを繰り返すだろう。そう、これが早紀に対しての俺の復讐だったからだ。
「ありがとう。ごめんね良ちゃん。本当にごめんなさい」
「いいんだ。お互い恨みっこ無しだ」
こうして俺の結婚生活は終止符を打った。
あれから5年。俺は早紀の実家に出向いた。
母さんから聞いたままでは気持ちの整理がつかないので、直接行ってみようと思ったんだ。
いつかの正月以来だ。早紀の実家のドアフォンを押した。
「根岸」の表札には両親の名前と「早紀」とあった。
「あ、良介さん・・・」
「ご無沙汰しています、お義母さん。これお供え物です」
「まぁ・・・わざわざありがとうございます」
お義父さんは出掛けていたそうだ。
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