顛 落(てんらく)

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顛 落(てんらく)

 あれからどれくらいの年月が過ぎたのだろうか。  俺は否応なしに思い出される記憶をまた辿ることになっている。 「何、母さん」 『良介、根岸の家から電話があったんだよ』 「え? 何の用で?」 『それが・・・』  俺が結婚をしたのは28歳の時。  妻は早紀(さき)。26歳。  恋愛結婚だった。一途で真直ぐなところに惹かれたんだ。細身で壊れそうな身体を守ってやりたくなる。そんな女だった。  だけど意思は強くて、これと決めたことは頑なに譲らない性格で、そんなところも好きだった。真面目だった。うん、真面目なんだよ。  2年後には長女芽衣(めい)が生まれた。  嬉しかったね。俺が父親になるなんて不思議な気持ちだったよ。  芽衣が幼稚園の年小さんになった時、家族3人で行ったディズニーランド。あの時の芽衣の喜びようといったら無かったな。早紀も幸せの絶頂だっただろうな。今でもあの時の会話を思い出せる。
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