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私は、先生からプリントの束を受け取り、萩山君の机に運びます。
「ごめんね、奥崎さん。大丈夫だった?」
「だ、大丈夫だよ!」
「それは良かった。じゃあ、机を動かすから、早く終わらせよう」
「は、はい!」
緊張のあまり、またしても声が裏返ってしまいました。萩山君は、私の声を気にもせず、机をくっつけて即席の作業台を作ってくれました。
「じゃあ、僕が半分重ねて奥崎さんに渡すから、奥崎さんは残りの半分を下に重ねていって」
「……うん。わかった」
すでに教室内は、私と萩山君の二人っきりになっていて、他に誰もいないと思うと、不思議と緊張がほぐれていました。
それにしても、こんなに間近で萩山君を見る機会は今までありませんでしたので、作業をしながら萩山君をジーっと見ることにしました。
「奥崎さん? 僕の顔に何か付いてる?」
「え、い、いえ。な、な、何も……」
「そう?」
「ま、まつ毛が長くて、羨ましいと思って……」
「そうかな……」
そう言って、萩山君は右目のまつ毛を指でさわりました。萩山君の指が細長く、男子とは思えないほど綺麗で、私はただその綺麗な指に見蕩れていました。
「……綺麗」
「え?」
「あ、なんでもない。気にしないで!」
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