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「そう? そう言えば、奥崎さんとこうして話すのは初めてだよね?」
「うん。萩山君は人気者だから、何となく話しかけ難くて……」
「そんなことないよ。さあ、さっさと終わらせよう」
単純な作業の繰り返しでしたが、私にとってはこれ以上ないほど、幸せな一時でした。
下校――。
私は自宅の前に立ったまま、家には入らずに放課後の余韻に浸っていました。
だって、玄関の扉を開けて、家の中に入ってしまったら、魔法が解けてしまうのではないか――と、思うと、自然と足が重くなっていました。
「お帰り。そんな所で、何をしているの?」
犬のぬいぐるみが、私に言いました、
「べ、別に! それより、誰かに見られたらどうするの? あなたこそ、早く家に入って!」
「大丈夫だよ。それより、今夜もよろしくね」
この犬のぬいぐるみこそ、私を魔法使いにした張本人。
現代の大魔法使いの成れの果てなのです。
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