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あれ、この人ってこんな人だったっけ。
私のイメージだと、女子には興味ないような冷たい人だったんだけど…。
言葉をうしなっている私の顔を彼はのぞき込む。
「中3の時、お前中村にクッキー渡そうとしてフラれた所たまたま見かけたんだよ。そんで、そのあと、クッキーを捨てるところも」
悲鳴をあげて、この場から逃げ出したくなりそうになった。
でも、真剣な彼の瞳が気になって足が動かなかった。
「お前があの日捨てたクッキー、実は俺が拾ってた」
そう言って、彼は胸ポケットからあの日捨てたクッキーの包み紙を取り出した。
「何で…拾ったの、そのクッキー」
「お前が捨てる時、悲しそうだったから。それだけだ」
図星だった。
あの時の私はそのクッキーに自分の叶わなかった恋心を詰めて捨てたかったけど、手放したくも無かった。
「別に、拾って欲しくなかったのに」
「俺がしたかったから、別にいいだろ」
何で、何でそんな事を言うの。
「勘違いしちゃったら、どうすればいいのよ…」
「だったらしろよ、勘違い」
「何で、なんでそんなことを言うの。私、もう恋なんてしたくないのに…」
「俺がお前を好きだから。それ以外の理由なんて無い」
そう言いきった彼の瞳は真っ直ぐ私を見ていて、その言葉がどれくらい本気なのか、伝わってきた。
あぁ、私があの時捨てた恋心は、彼の所で静かに育っていたようだ。
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