本編

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中学3年生の時のバレンタイン。 私は初めて好きな人にクッキーを渡しに行った。 「あの…クッキー、受け取ってください」 勇気を出して言ったのだ。 でも、かえってきた返事が、 「誰が食うかよ。そんなもん」 そう言って、舌打ち混じりに私の好きだった人は去っていった。 甘いものが嫌いだった彼のために甘さを抑えたチョコレートのクッキー。 誰かに渡そうかとも思ったが、何となく私が嫌だったので、教室のゴミ箱に捨てた。 『好きです』と書いた手紙と一緒に。 家に帰ろうと校舎から出てみたが、なんとなくあのクッキーが気になって教室へ戻り、ゴミ箱を覗いた。 でも、そこには捨てたはずのクッキーが消えていた。 誰かが持っていったのだろうか。 でも、私なんかが作ったクッキーを食べたいと思う人がいるのだろうか。いや、いないだろう。 私はクラスの中では1番地味で、いい所なんてひとつもないのだから。 私はクッキーの行方を知らないまま、中学校を卒業した。
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