本編

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高校生になってからも、バレンタインは友人、部活の先輩、後輩にクッキーを渡すだけで特に何も無かった。 そして、高校3年生の夏。 放課後の教室でひとり、窓を見ていた。 外では野球部、サッカー部が汗を流して部活をしている。 そう言えば、中学で私が好きだった人はテニス部だったはず。 嫌いなのに、どうして思い出すんだろう。 気がつくと涙を流していた。 誰もいないから、そう思い涙を拭かずそのまま眺めていたら、教室に誰か入っていた。 後ろを振り向くと、同じ中学だった野球部の彼がいた。 「何やってるんだ。そんな所で」 涙の理由も聞かないで、私の隣に来た。 「外を眺めてただけだよ。凄いなって思って」 彼は私の返事なんか興味なかったようで私と同じく外を見ていた。 無言が続いた。 私なんかほっといて行けばいいのに、一体、何を考えているんだろう。 何か喋ろうと口を開いた瞬間、相手も喋ろうとしたようで見事に被った。 「あっ、ごめん…」 「別に。気にしてねぇよ」 さらに、気まづくなった。 「えっと…さっき何を言おうとしたの」 「大した事じゃねぇよ。ただ、いつも甘い匂いするなって言おうとしただけ」 思ってもみなかった質問に少し驚いた。 確かに、あの日から毎日お菓子を作るようになったが、他人に気づかれるぐらいになっていたとは思いもしなかった。 「時々、お菓子を作ってるの。多分、その匂いじゃないかなぁ」 「ふーん。なら、俺にも今度作ってきてくれよ」
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