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マサト「ミキ、感じないか?ここは、この谷間は、おそらく‘場’だ。現実の風景ではない」
ミキ「場って……どういうこと?」
マサト「きみとぼくの場さ、二人だけの。ぼくたちは……そうだ、だんだんと記憶が戻って来た。ミキ、ぼくたちはカシオペア50年頃に地上に住んでいたんだ。核戦争が起こって……人類は死滅した」
ミキ「ああ、そうだ!(悲鳴に近い泣き声)マサト、私たち二人だけが生き残って、そして……」
マサト「そして、ぼくたちは決断した。このまま死んで別れ別れになる前に結婚しよう、いっしょになろうって。そしてその結婚とは……」
ミキ「そうよ、マサト。私たちは猿田博士にお願いしたのだったわ。わたしたちの他にもう一人、地上に生き残って、地球上のいろいろな生物を残そうとしていた方……」
マサト「ぼくたちの意識をコンピュータに取り込んでもらって、その中で二人は融合しようと、いっしょになろうと……そう決めたんだったね。だけど博士は先に亡くなってしまった」
ミキ「だから私たちロビタに頼んで……」
ロビタ『ピー!いまなんと?……なんと云われた?!このロビタに頼まれたとは、いかなることか。そもカシオペア50年とはいつのことなりしや。わがメモリーにそのような年号は存在せず、世界のいかなる国にもあらざるべし。奇怪なるかなこの二人、まこと奇怪……い、いや、悉皆、理解不能なり。ピー』
ミキ「ロビタ……あのかわいらしかったロボット。いま何しているのかしらね。ねえ、マサト、まだロビタは残っていると思う?地球上にたったひとりで」
マサト「わからない。人間は死に絶えただろうし……ぼくたちが入ったコンピュータを守ってくれているかどうか。だいいち……」
ミキ「だいいち、なによ」
マサト「はたしてぼくたちはコンピュータの中でいっしょになれたのだろうか。あの瞬間、二人の意識を取り込んでもらった瞬間は、確かに君を確認した。いまこうしているようにこの手で君を抱きしめ、願いがかなえられたことを喜んだんだ」
ミキ「ああ、そうだったわ!あの時はうれしかったわねえ、マサト。これでいつまでもいっしょにいられるんだって……」
マサト「ああ、そうだったね、ミキ。だけどミキ……そのあとの記憶がまったくないんだ、ぼくには。ミキ、きみにはあるかい?」
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