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ミキ「わからない、私も……ただ、あのあと想像もできないないような長い年月がたった気がする。ずーと冬眠していたような、それでいてどこかで生きて、働いてもいたような……あなたといっしょじゃなく、一人としてね」
マサト「それだ!実はぼくもそうなんだ。きみとぼくがまったくひとつになってしまい、ぜんぜん別の何かになってしまって、人々の中で動きまわり、働いてもいたような……」
ミキ「ねえ、マサト。いまはいったい何年かしら?あのあと人類はまた復活したのかしら?」
マサト「うーむ、わからないよ。想像もできないな。ぼくたちが生きていたのは地球年代45億1234万5678年、略式年代カシオペア50年だった。あれから何年が過ぎ去ったのか……」
ロビタ『ピー!待たれよ、いま計算し申し上げる(コンピュータが計算するような電子音)ピー、解答。地球年令アバウト46億年として、それはいまから8千765万4322年前のことなりき。ピ、ピ、ピ、ピッ!?そもおかしからざるや?ご両人。かかる大昔に人はまだおらずして、オーストラロピテクスだにおらざりき。されば当時において核戦争など起こるべきものか。ピー、奇怪、悉皆、不可解なりき。せ、説明されよ、ご両人。ご……』
ミキ「私もわからないわ。千年も万年もたったような気がする」
ロビタ『ピー、だから8千765万4322年前と……ピッ』
マサト「もうどうでもいいさ、そんなこと。ぼくたちが二人でいられなくなってしまい、二人の記憶もなくなって、ぜんぜん別個の誰かになってしまうなんて……こんなこと残酷だ!猿田博士はこうなることをわかっていたのだろうか?だったら許せないな!」
ミキ「まさか……でも、ひょっとしたら……あの人私たちの仲をうらやましがっていたから……もしかしたら意地悪をして?」
ロビタ『ピー、猿田?さきほども承りしがその名前はわがご主人と同名なり。主人ならば決してそのような方では……あなかま、8千765万4322年前に主人の居るものか。ピー』
マサト「うーん……いや違うな。そんなつまらない動機でこんなことをする人じゃない。しかしわからなかったということもないはずだ。ミキ、ぼくたちがこうなったのには、どうも博士の、なにがしか深慮があったのに違いないよ」
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