2人が本棚に入れています
本棚に追加
その周囲で暮らす富裕層の更に奥へ分け入った所に依頼主がいる。
「門構えからして、歴史ある豪邸ですって感じだな。庭の手入れなどは変わっていようとも、俺は、初めてではない気がするよ」
「だからこその依頼だと思うわ。私がKouと一緒に訪れるのには、深い訳があるの」
どんな訳かと、Kouはまだ分かっていなかった。
「李家はこちらでございます」
黒く華美でない姿の四十代程度の女性が、奥へと案内した。
建物の中は、落ち着いているが、立派な調度品が整然と見られた。
女性の開いた扉の向こうから、可愛らしく澄んでいるがしっかりとした声が聞こえた。
「李凛はワラワよ。李家の当主なり」
凛と名乗る八歳程の少女が、民族衣装なのであろか、胸で合わせた長い袖の赤い地に牡丹のような豪華な刺繍にまとわれて、二人に挨拶をした。
腰まである漆黒の髪を垂らして、豪華な白いレースのソファーにゆったりと横になるように座り、二匹の猫を撫でまわした。
いくらでも座れるソファーがある広間のような客間だったが、AyaもKouも凛に見とれて佇む。
「単刀直入に伺いますが、手紙にあった、守って欲しいものとは何でしょうか?」
Kouは、むずむずとして、珍しく拙速な言動に出てしまった。
最初のコメントを投稿しよう!