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「雄の三毛猫で、双子! 雄の三毛猫だけで三万匹に一匹の希少性があるのにっ……ハッ」
ハックション。
ハックション、ハックション、ハックション。
「失礼いたしました。猫アレルギーなのですよ。Kouは」
AyaのフォローにKouも平謝りだ。
「ご紹介いたしますわ。ToiとMoiです。はい、ご挨拶をして」
赤い首輪のToiと白い首輪のMoiは、凛から滑るようにカーペットに降り立ち、可愛らしく座った。
なーご。
にゃあーん。
「Toi様にMoi様、よろしくお願いいたします。Ayaと申します。こちらのKouは、猫様アレルギーなどとにっくき体質で、この度の交渉には私も一緒にさせてくださいますようお願い申し上げます」
凛は、無表情に首肯した。
「これが深い訳か、Aya。謀られた気分だよ」
ハックション。
失礼しますと一礼し、Kouはグランチェックのハンカチで顔を覆った。
Ayaは、ごめんねと手を合わせた。
硬い表情だった凛が口もとをほころばせた。
中庭が、雨女でもいるかのように、とうとうと濡れ始めた。
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