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「はっ。恥ずかしくなっただけよ」
小声で黒歴史を隠したがった。
「シュヴァルツ・ドラッヘの刻印を二度撫でると別れたAyaの母に逢えそうな気がするのだろう?」
「……そうなの。私の唯一の肉親、母さんとしか呼んでいなかったから、名前も分からないけれども」
Ayaの弱点がここにあるのは、Kouも承知だ。
「人は、必ず両親の傘のような庇護で、ぬくぬくと育つばかりではないさ。色々あるってことだな」
「Kou……」
Kouは、これからの仕事の為に、Ayaの気持ちをさっと切り返した。
「さ、時間だ。二十四日正午になる」
Kouは、通行人のふりをして、凛の後ろを歩いた。
凛は、黒と茶の猫様キャリーバッグを二つ抱えている。
気の強い凛だが、恐る恐るコインロッカーを探す演技をする。
五メートル向こうから、帽子を目深にかぶり、両手をズボンに突っ込んだ組織Jらしき男が一人で周囲を見回しながら来る。
Ayaは、バイオリンに弓をつがえるように、シュヴァルツ・ドラッヘを構える。
いつ撃ってもいいように、ハンマーを指で引き起こした。
慎重にターゲットをとらえた。
引き金を迷いなく引く。
ターゲット、ロック・オン!
シングルアクションだ……!
「うあああ!」
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