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一瞬ためてから、破裂音がし、セダンの左後方タイヤがバランスを崩す。
組織Jの車は、ぐるりと回って、柱にぶつかった。
火災はまぬがれたようだ。
Ayaは、ハイヤーを降りて、セダンの様子を見に行くと、エアバッグにフルフェイスがめり込んでいる。
組織Jのぶざまな姿で、カーチェイスは幕を閉じた。
ハンチング帽の男は、もう上の階を通って逃亡に成功しただろう。
Ayaはノックをして、車中のフルフェイスヘルメットと話をしようとした。
ハンチング帽の男が実行犯で、車の運転手は待機していただけとうかがえたけれども、下っ端だろうが、何かの役には立つだろうとAyaは思った。
「組織Jはどこにあるのかしら? 答えなさい」
うつ伏せの人物は無言なので、気を失っているのか、しらを切っているのか確かめてみる。
「さっき逃亡したハンチング帽の男は、李家の沢山いる御用人が始末したわ。フルフェイスのあなたもいずれそうなるのよ。覚悟して車から降りなさい」
ブラフだった。
ここで、フルフェイスのこの人物までも逃がす訳には行かない。
窓越しにシュヴァルツ・ドラッヘを押し付けるように当てた。
Ayaはカウントする。
「三、二、いっ……」
やつは起きていた。
エンジンを鳴らして、セダンを急発進させる。
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