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Ayaは、分かったと凛に断って、中の手紙を読んだ。
奇怪な内容だとAyaは思ったが、こんな依頼は初めてではない。
「依頼先は、日本だ。飛べるか?」
Ayaは、黙ってうなずいた。
しばらく間があったのは、Kouと別れなければならないから。
再び会える確証はどこにもないから。
だから、Ayaは再会のシグナル、雨を歓迎する。
リビングから臨む中庭からは、号泣する雨音が聞こえていた。
素敵な雨傘が欲しいと凛に頼むと、凛は雪に品のいいものを十数本運ばせた。
その中から、凛がAyaに似合いの黒い地に黒い蝶の刺繍がほどこしてあるのを選んでくれた。
骨もしっかりとし、八本ある。
「Kouの依頼に、ノーはないのよ。分かっているかしら?」
Ayaは、傘をさしてくるりと回った。
はい、そこで笑顔を魅せる。
「はい、はい。仰る通りです。Aya」
少しでも別れる寂しさを紛らわせたかった。
「大根役者は、ブリのあらと一緒になればいいわ」
「いやあ、俺、ブリ大根が好物だって知っているよね」
Kouのよく着るワイシャツの襟をつかませて貰った。
「一発殴らせて」
「イヤ。遠慮させて」
はらはらする展開をじーっと見ていた小さな目があった。
「Ayaは、Kouと仲がよろしいのう」
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