第一話 AyaとKouのアリア

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 背筋の伸びた朝比奈竜(あさひな りゅう)が既にたった一人で乗っていた。  一人の背広を着た男性が乗り込み、ドアが閉まって階下へ動き出すのを見計らって、口を開いた。 「私が、Kouですが」 「おお! 貴方が! 慣れないことで緊張していました。私のバイオリン達を守って欲しい。家の鍵や書斎の裏にある隠し部屋も開放しよう。報酬は、前渡しで。言い値で構わない」  Kouは、すました顔で相手の弱みを探っていた。 「分かった。次の階で別れよう。朝比奈竜様は地上三階で降り、そのまま喫茶店に入ってください」  Kouは、報酬と鍵を受け取り、足音もたてずに地下駐車場で消えた。  情報屋、Kouは、仕事仲間、コードネームAyaにコンタクトを取る。  それは、インターネットやスマートフォンなどを使わない。 「日本は、蓮の花盛りだわ。ああ、小さな子は、朝顔なども育てているのでしょうね」  Ayaは、上野の界隈を時折佇みながら歩いていた。  しばらくして、花を潤すにわか雨が降り出した。  近くのパンダぬいぐるみ店の軒下を借りた。 「ふう……。七月も冷えるのね」  体を震わせて縮こまり、ぐっと体に力を入れて寒さを忘れた。  気が付けば、隣にも軒下で雨宿りする者がいた。     
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