一話 

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「ルゥ君、大丈夫?」 「花ちゃん……ふえぇええ」  ルゥリッヒは、よく泣く子供だった。  海外の血を引いた濃い顔立ちに、長身。  それなのに内気で引っ込み思案の性格。 「せっかく綺麗なのに、なんでこんなに泣き虫かなぁ」 「僕、この外見が嫌なの」 「可愛い顔なのに。ほら、私のお洋服私より似合いそう」 「本当?」 「着てみる?」  私はふざけたつもりでそう言った。  のに。 「ん」  ルゥリッヒは真顔で頷いてその花柄のワンピースに袖を通した。  そして、鏡の前でにっこり笑った。 「僕、これからは女の子の格好したいな……なんか勇気出る」  私が、ルゥリッヒの道を踏み外させた瞬間だった。 *
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