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「やべぇ、あれモデルかなんか?」
「でっかいよね、あの美女」
(今日も目立ってるなあ……ルゥは)
あれから数年。今私たちは高校一年生の夏。
エスカレーター式の緩い、けれど学力が高い高校に私たちは進学した。
私服で通えるその校風は、ルゥリッヒにとってはとても都合がよかった。
「花ちゃん、今日の僕も可愛い?」
「はいはい、可愛いよ。頭にでかいリボンまでつけて……あーもう……」
「自分で縫ったんだ」
「器用だよねえ。買えばいいのに」
「花ちゃんはお金持ちだからね。僕はそうでもないし」
「うるさいなあ。どうせ成金だよ、私は」
「拗ねた」
「拗ねてない」
「えー」
黒いパフスリーのチュニックに、デニムのショーパン姿のルゥリッヒは、やっぱり長身の美青年には育った。育ったのに、メイクで美女に化けている。
個人的にはもったいない、と思う。けれどルゥリッヒは、メイクをしないと外出ができない。ありのままの自分を見られるのが怖いらしい。
「花ちゃん、花ちゃん」
「はいはいはいはい」
いつでも私にべったりな結果。私は友達がいなかった。
浮いてるほどではないにしろ、近寄りにくいのは確かだろう。
(そりゃこんなでかい女装連れてればな)
それでも私はルゥリッヒがかわいい弟のようで突き放すことはできないのだ。
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