寂滅

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 その言葉を信じたからこそだったのに、神とひとつになれないばかりか、そのことが原因で魔女とまでされてしまった。  神にも等しい存在を思っていた神父様に裏切られたことで、やはり神しかいないと感じた。  「神のもとへ行けるのは、神と、その直属の部下のみと聞いております」  「私は神に選ばれたのよ・・・!!私は神の声を聞いたのよ!!!それなのにどうして神のもとへ行けないの!!!私は神だけを信じ、神だけを愛しているのに!!」  「死者が神のもとへ行けるとして、この船は死者は乗ることが出来ません。あくまで、死者を運ぶのはカロンの役目なのです。私は彷徨っている魂を乗せる役目となっております。ご了承ください」  一人静の言葉に、スルガトは目を見開きながら、自分の胸元を掴んで叫ぶ。  「神の為なら・・・この命さえ捧げるのに・・・!!!」  ゆっくり動く船の上で、スルガトは泣いた。  「なら、俺が連れて行ってやろうか」  「へ?」  聞こえて来た声と共に、イベリスが現れた。  イベリスの声がなんだか優しいものに聞こえたスルガトは、まるで神の声でも聞いたかのように恍惚とする。  周りには数多の魑魅魍魎たちがいて、スルガトが乗っている船を沈ませようと目論んでいる。  しかし、そんなもの見えていないかのように、スルガトは口を開く。  「神に、会わせてくれるの?」  そのスルガトの表情が全てを物語っているのが分かると、イベリスは珍しくこれは完全勝利だとほくそ笑む。  「ああ。その船から下りて俺達と一緒にくれば、あんたの言う神って奴に会わせてやれるかもしれねぇ。少なくとも、そいつよりは高い可能性で」  「ほんとうに・・・?」  スルガトへと伸ばされたイベリスの手に、スルガトはそれを掴もうと腕を伸ばす。  しかし、2人の間に真っ白な花弁で作られたオールが姿を見せる。  イベリスは顔も見ずに、いつもと変わらぬ口調と声色で言葉を発する。  「邪魔すんなよ?御所望なんだ」  「まだ死んでいない人間を引き渡すわけにはいきません。それが例え、本人の意思であったとしてもです」  「お堅いねぇ」  スルガトが神のもとへ行きたいと言っても、そのまま引き渡すわけにはいかないと、一人静は静かに語る。
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