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イベリスがスッ、と手をあげると、他のそれらが一人静を狙って襲いかかってくる。
ぐぐ、と船が動いたかと思うと、2匹の蛇が巨大化してそれらを飲みこんで行く。
消化には時間がかかるが、通常の蛇とは異なるため、ものの1分もあれば満腹状態から飢餓状態へとなるまでに消化速度を変えられる。
一瞬にしてお腹が膨らんだかと思うと、同様に一瞬にしてお腹の膨らみが元に戻る。
一方でオールの風の直撃を受けなかった者は、一人静がオールを器用に使いこなすことによって、川に落ちるか、蛇に食われるか、食虫植物に食われるか、もしくは半分に裂かれていた。
この小さな船一隻が、軍艦にも勝る。
「名は体を表すとは言いますが、皮肉なこともあるものですね」
「余裕ぶっこいてんなぁ?」
大方片づけ終わったところで、スルガトが叫んだ。
「止めて!!!」
いっきに静まり返ったその場で、スルガトはイベリスに向けて言葉を紡ぐ。
「お願い・・・。私を連れて行って!!」
縋るように発せられたその言葉に、イベリスは目を見開いてニヤリと笑った。
すると、イベリスは掌から赤く小さな木の実を生やし、その一粒を手に取った。
そしてスルガトに見せつけるようにして自らの顔の近くに持ってくると、今度は一人静の方を見た。
「さて、ここでコレを喰ったらどうなるか。お宅なら分かるよな?」
「・・・・・・」
イベリスは再び視線をスルガトに戻すと、こう言った。
「念じてみろ。お前は一体誰に会いたいのか。そうしたら、俺が会わせてやろう」
「ああ・・・!!私は、神に!!神に会いたい・・・!!」
スルガトは目を閉じ、両手を絡ませるようにして合わせると、そう祈った。
そして何かのまばゆい光に包まれたかと思いそっと目を開けてみると、目の前には煌々とした何かがいた。
それが一体何なのかは分からないが、神々しい何かであることだけは分かった。
「ようやく、会えたのですね・・・!」
それは薄らと微笑み、スルガトに赤い木の実を差し出した。
スルガトはそれを受け取ると、何の迷いもなく口の中へと放り込み、少しだけ噛むと飲みこんでしまった。
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