灯籠

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亡くなると、川を通るらしい。  その川を通って向こう岸へ行ってしまうと、二度と元の世界へは戻って来られないと、誰が言っていたのかは知らないが。  しかしその川へ向かう手前に、もう1つの川があるという。  そこへ向かうのは亡くなった人ではなく、生死を彷徨っている人たち。  そこいるのは、ただ1つの花。  「カイト!カイト!!」  「先生!どうかカイトを助けてください!」  真夜中の病棟内で、慌ただしく動きまわる影があった。  産まれた時は、とても元気そうだった。  しかし、1歳になる前に、突然としてその小さな身体に不調が起こる。  急に痛い痛いと泣きだすと、肌のあちこちに痣が現れ、鼻血も出てきて、しまいには身体中に出来た癌のようなものが転移していると言われた。  2歳になって少し経った頃入院が決まり、色々な検査を行ってみたものの、原因不明としか言われなかった。  ついにカイトは7歳になってしまったが、それでも未だ、謎の病に病名はつかなかった。  心臓にも脳にも何か悪い物があるらしいが、詳しいことはよく分からないまま、カイトは身体を動かせない状態が続いている。  医師が言うには、この状態でここまで生きていられるのが不思議なほどの酷さのようだが、死ぬに死にきれない方が辛いだろう。  「カイト・・・!!」  いつ死んでもおかしくないということで、母親は常に病院に泊まれるようにしていたのだが、そんな中、カイトの身体には急変があった。  心臓マッサージをしながら、緊急手術が行われることとなった。  「?」  カイトは、石がごろごろと転がっているような河原に立っていた。  ここは何処だろうと思っていると、近くで男の子が沢山の石を積み上げているのを見つけ、近づいて行く。  すると、そこへ黒い影がやってきて、男の子が積みあげていた石を、足で蹴飛ばして崩してしまう。  黒い影は笑い声を出しながら消えてしまうが、男の子は再び石を積み上げ始める。  カイトは男の子に近づいて行くと、何をしているのか聞いてみる。  「どうして石を積んでるの?」  カイトは、なぜ自分が言葉をちゃんと話せるのかなど、わからない。  ただ、口を開いて声を出したら出て来た。  「ねえ、どうして?」  だが、男の子は何も答えない。
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