灯籠

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 しばらくすると、そこへまた黒い影がやってきて、また積みあげた石を崩すと消えて、男の子はまた積みあげる。  その繰り返しを見ていると、ギィ、という小さな音が聞こえてきたため、そちらに目を向ける。  河原につけられた小船は、まるで緑の蛇と紫の蛇がからまったような感じで、その回りには植物の蔓が巻かれ、様々な種類の花が咲いていた。  オールと思われるそれは白く綺麗な色をしており、花弁が翼のように重なっている。  そしてカイトを見ている1人の・・・男か女かは分からないが、その人物は黒の服の上に赤くて長いローブを頭から足先まで覆いかぶさっている。  顔の鼻から上の部分は、真っ白で何も描かれていない仮面のようなもので隠されているため、目は全く視えていない。  そして首元には、色んな花をチェーン代わりに、真ん中には生々しい所々欠けた髑髏が飾ってある。  「どうぞ、この朝凪にお乗りください」  そう言われ、カイトは乗った。  船に乗ったカイトだが、船を漕いでいるその人物は特に愛想が良いわけでもなく、何か話してくれるわけでもない。  なんだか不思議な気持ちのまま船に揺られていたカイトは、まるで川の中で育ったように水面に顔を出している何かの実を見つけた。  真っ赤で小さなその実に、カイトの胃は涎を垂らす。  「あれ、食べても良い?」  船を漕ぐ人物に尋ねてみると、カイトの方を見ること無く答えた。  「食べてはなりません。ここでは、何も口にしないよう、お願いいたします。そうでないと、戻れなくなってしまいますので」  「?戻るって?」  それについては答えてくれなかったため、カイトは大人しくしていた。  子どもとしては好奇心から聞きたいところではったのだが、子供ながらに、これ以上聞いてはいけないような気がしたのだ。  カイトの乗っている小船の内装としては、土と雑草という、外にいるような感覚になるものだ。  だからと言って嫌な感じではなく、カイトは好きだ。  「あれ何?」  特に船の上ですることもないカイトが指指したのは、遠く遠くの方に見える、真っ赤になった水平線。  まるで燃えているような、何かが揺れ動いているような、そんな赤だ。  船を漕ぐ人物も、カイトが指を指した方向に顔を向けると、少し間を開けてから言う。  「・・・あれは曼珠紗華です」  「まんじゅう?」
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