灯籠

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 「お花です」  「ふーん。燃えてるみたい!!」  「そうですね。まるで対岸の火事です」  「たいがん・・・?」  またしても、沈黙が続く。  一向に楽しい会話にならないため、カイトは暇でしょうがなく、船の縁に顔を近づけて川を眺めてみる。  小船が流れている川には、蓮が浮かぶ。  川の下を覗いてみると、そこには雲が浮かんでいるように見えたが、急に怖い顔が見えたため、カイトは身体を後ろにのけぞらせる。  もう一度顔を覗かせてみると、そこにはもう、怖い顔はなかった。  何処に向かっているのかも分からないでいると、急に、また少し離れたところが雨になっているのが見えた。  こちらは全く降っていないというのに、激しく雨が降っているのが分かる。  「あっちは雨が降ってるね」  「・・・そうですね。誰かが向こう岸に着いてしまったのでしょう」  「向こうのお花のところ行けるの?」  「行けないことはありませんが、この船ではいけません。というか、行くわけにはいきません」  「ねえ・・・」  カイトが何か話そうとしたところで、急に小船が揺れた。  なんだろうと思っていると、空からも川の中からも、気味の悪い姿形をした者たちから、人間にも見える者たちが突如現れる。  「そのガキをこっちによこせ!!」  「ガキを連れて行くぞ!!!」  全員が、カイトを狙ってきた。  カイトは身体をこわばらせて動けないでいると、小船を動かしていたその人が、オールを持ちあげてブンッ、と振りまわした。  「わっ!!」  すさまじい威力の風が吹くと、カイトを襲ってきた奴らの大半は何処かへ飛ばされてしまった。  残った男たちはというと、小船が急にうねうねと動き出し、緑のそれは皆石に姿を変えてしまい、紫のそれは毒で相手の身体を蝕んでいた。  「くっそ!!燃やせ!!」  すると、今度は小船ごと燃やしてしまおうと、火を向けて来た。  このままでは燃えてしまうと思っていたカイトだが、その心配はなかった。  オールも小船も燃えることはなく、外に巻きついている花の中には食中植物もあるらしく、火ごと丸呑みしていた。  「どうなってんだ!!普通の渡し船じゃねえぞ!!!」  カイトはぽかんとしていると、再びオールで小船を漕ぎだした男が言う。  「ご安心ください。この小船は特注品。決して沈まず流されません。このオールも船も決して燃えず折れることもありません」
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