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気を許せば、吸い込まれそうな程に透き通った深い色合いに、良大の心は囚われ、只々その少女に見取れるばかりであった。
「何ねぇ?うちに、何かぁ用でもあるん?」
涼しげな表情で少女が尋ねる。良大は、その言葉にハッとなり、ようやく我に返った。
「あんたぁ、ぼんやりなんじゃねぇ…ずっとそこに立ちんさって、一体どうしたん?」
さらに追及するような少女の問い掛けに、良大はすっかりと舞い上がってしまう。どう返答してよいのか言葉が出て来ない。
そんな、困惑している飼い主をよそに、ペスは少女に戯れ続けている。
「そ、その犬、僕の犬なんよ!名前はペス!!」
思い付いたように良大は、とっさに言葉を絞り出してみせるが、少女の反応に手応えを感じる事はなかった。
あからさまに取り繕ったような良大の様子を、少女はただ黙ってうかがっている。
無感情に向けられたままの少女の瞳に、良大は萎縮しながらも、何とかロジックを組み合わせるように言葉を紡ごうとした。
「ペ、ぺぺ、ペスは人見知りが激しいけぇ、知らん人には寄り付かんのじゃけどぉ…」
「ふ~ん、ほう…」
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