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「碧く澄んだ、不思議で綺麗な目ぇをしとってじゃねぇ…」
何とも呆けた調子で、良大はつぶやいた。
まるで、心を何処かに置き忘れてしまったように夢心地な面持ちである。
その横で、尻尾を振りながら、大人しく少女を見送っていたペスが、良大の言葉に応えるかのように小気味よく一吠えする。
「お前も、ほう思うじゃろ?」
それにしても、不思議な瞳を持つ少女であった。
現代風に言うならば、虹彩異色症の一種『オッドアイ』や『バイアイ(片青眼)』と言ったところであろうか。
ともかく、この時代にはまだまだ世間一般に認知すらされていない症例ではある。
だからこそ良大は、ただ単純に少女の碧い瞳に魅了されていたのかも知れない。
木々の薫りが深みを増し、緑の色も鮮やかになり始めた初夏の日の、そんな昼下がり、良大はその少女と出逢った。
良大にとって、その出逢いは、あまりにも幻想的でセンセーショナルだったに違いない──
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