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プロローグ
ソレは、ある日突然この地にやって来た。
「神の化身」と言われる程に美しく淡い白い肌を持つが、「悪魔の炎判」と言われる禍々しい気を放つ黒い呪印が身体の至る箇所に刻まれた赤ん坊。
余りの異形さに「向こう側」 の精霊が彼を連れて来た と人々は囁き恐れた。
その反面、彼は異形な姿でありながら見た者全てを虜にしてしまう美しさ、愛くるしさ、妖艶さ、全てを兼ね備えていた。
彼がこの地にやって来てから数年、彼はすくすくと育っていったのだが…彼はいつも1人だった。遊ぶ時も寝る時も食事をする時も。
だが彼はそれでも寂しいと感じる事はなかった。元々「親」という存在を知らないのはもちろんの事、それ以上に時たまに彼の元を訪れる者の存在のおかげだった。
その存在とは、この地で人間と共に暮らす精霊。
精霊はこの地に住む人々と契約を交わした存在の呼び方。
集落や町、村単位で契約を交わす人々。個人で契約を交わす者、生まれた時すでに契約をしている者等様々な人がいるが、共通している事は人々は必ず精霊と契約を交わし事あるごとに精霊の助けを借りている事。
しかし、彼がどういった経緯でその精霊と契約を交わしたのかは謎となっている。
彼の住むこの世界の名前は「レイクピア」
中央平原と呼ばれる場所に、見渡す限りの大きな湖がある調和に満ちた広大な楽園。
湖から遥か彼方にはこの広大な地を囲むように大きな切立った山脈が連なっている。この山脈は余りにも険しく登ることが困難な為、人々の世界は山脈の中側だけとなっている。
いつの頃からかこの山脈は「最果ての壁」と呼ばれる様になり、今ではこの山脈に近づく者は誰1人として居ない危険な場所となってしまった。
人々の中には「最果ての壁の向こう側にも世界は広がっている」と信じる者達もいる。そのせいで異形な彼は「向こう側」の精霊が連れてきた者と噂される様になってしまったのだ。
次第に異形な彼はこう呼ばれる様になった。
陰と陽の狭間で生きる者 と。
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