草原に咲く破壊王

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 キキキキキキキイン……!!  強烈な金属音が辺りに響き渡る。それはハザマの斬撃と破壊王が羽織るコートがぶつかり合い生み出された音だった。  破壊王は迫り来る斬撃にその場を微動だにせず、自身の身体に何の防御術も掛けず、ただ両腕を交差させただけの十字受けで全ての斬撃を防ぐ。  その高過ぎる防御力にハザマの斬撃は破壊王の羽織るコートを破る事も、傷を付ける事も出来なかった。  しかし、ハザマは既に先手を打っていた。斬撃を放つと同時に、変化術である『舞い踊る絢爛の蝶』で無数の蝶々に変化し自らが放った斬撃のすぐ後ろを音速で飛びながら、破壊王との距離を縮めていた。  しかし  破壊王はハザマが化けている、音速で向かって来る無数の蝶々に早い段階で気付いていた。  ハザマの化ける蝶々と自身の右足の距離がピッタリのタイミングを見計らい、しっかりと地面を踏みしめる軸足を綺麗に回転させ、迫り来る無数の敵に向かって廻し蹴りを放った。  それは蝶達には当たらなかったものの、破壊王が放った凄まじい威力の蹴りは吹き荒れる暴風を生み出した。  その暴風を正面からまともに受けた無数の蝶々は抗う事が出来ず真後ろへと吹き飛ばされる。  10メートル程後方へ飛ばされたハザマは、そこで変化術を解き人型へと戻り足を地面へと着け踏ん張った。  それでも荒れ狂う暴風の威力は中々消えず、踏ん張った両足で地面を削りながらそこから更に4メートル程後ろへと押し戻された所でようやくその威力を消す事が出来た。 「ふぅ……。廻し蹴り一発がこの威力とは…ハッ!?」  自分の力を込める両足ばかりに気を取られていたハザマは、正面に視線を向けて初めて気が付いた。  破壊王が、立っていたはずのその場所から忽然と姿を消している事に。
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