楽園の彼方に望む地平線

楽園

「でわ、こちら側からも攻撃させてもらうよ。どちらかに少しでも傷が付いたらそこで終わろう」

　悪魔の右側に新しく生えた緑の翼が大きく羽ばたく。

　その瞬間、空を見上げ地面で構える異形の彼に向かって先端が鋭く尖った無数の緑の羽根が襲い掛かった。

　しかし、異形の彼は自分に迫り来る無数の羽根を見据えて動じることなく不敵に笑う。

「…翼を生み出すとはとても良い術だな。だが…新しい術を試すには絶好の機会だ。仙法術・変化術・舞(ま)い踊(おど)る絢爛(けんらん)の蝶(ちょう)！」

　静かに呟き右手で印を結び術を放つ。すると彼の全身は濃い霧へと変わり、約60頭程の淡い瑠璃色の蝶々に変化した。

　約60頭程の瑠璃色の蝶々は空から降り注いで来た無数の尖る緑色の羽根を、舞い踊るかの様な優雅さでヒラヒラと飛び交いながら避ける。
　その攻撃的な羽根は60頭の蝶全てが持つ色鮮やかな美しい身体に一筋の掠り傷すら与える事も無く緑豊かな大地に突き刺さった。