楽園

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「仙法術・再生術(さいせいじゅつ)()()れる平穏(へいおん)(かぜ)」  優しく、それでいて力強い風が異形の彼の右手を纏う。そしてその優しい風が収まると同時に根元から無くなっていた右手の5本の指がまるで何事も無かったかの様に綺麗に生えていた。  アラ素敵! 綺麗に治りましたネー…………。 「キミ、メチャクチャし過ぎでしょ」 「閃きに発想力、そして少しの我慢と大きな覚悟で自らの身体とその一部を凶器へと変え無限の術を生む。仙法術を舐めんなよ?」 「…確かに僕自身、翼生成術に絶対の自信を持っていたからな。キミの言う通り少し舐めて掛かっていたのかもしれないな。悪かった、少し本気だすよ」 「…! だからそれが舐めてるって言ってるんだよ! もう容赦しねぇ、ぶっ倒す!」  悪魔の挑発とも取れる言動に怒りの限界を突破した異形の彼は、地面に転がる愛用の竹棒を拾い新たな術を使うため印を結び始めた。 「ちょっと遅いね」  悪魔は彼が印を結び終えるよりも早く緑と紅の翼を彼に向かい同時に羽ばたかせた。刹那、先程と同じように無数の鋭く尖る緑の羽根が異形の彼目掛け飛んでいく。 「テメェの攻撃等俺には通用しねぇ。強硬術・真鉄纏」  先程とは違い襲い来る羽根を避けることなどせず、真鉄纏で硬く強化した自らの身体でその襲い来る尖る羽を弾いた。  が  …なんだ、このすさまじい眠気は? 昨日の鍛錬のせいで疲れているのか…? 畜生…まだ決着付いてねぇ…だろう……が…  気持ちとは裏腹に何故か彼の視界はどんどんと狭まり思考能力も弱まっていく。 「ゴメンね、今の攻撃は刺の物理攻撃だけではないんだよ。紅く落ちてくる物には気付かなかったのかい?」  竹棒を両手で握り締め地面に刺しながら全身を支え、なんとか眠らずに意識を保つ彼の眼の前に降り立ち悪魔は言った。  紅く…落ちる物……?
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