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襲い来る眠気と戦いながら彼は地面へと目線を下げる。そこには大地に突き刺さる緑の羽根以外に数枚の薔薇の花びらが落ちていた。
「この薔薇の花びらは紅い翼から放たれる物でね、この薔薇の匂いを嗅いだ者を強制的な眠りへと誘う能力を持っているんだ」
強制的だと? やべぇ…防ぎようがねぇ……
「心配しないでくれ、そんなに長い時間眠らせる事など出来やしない。6秒程で目が覚めるからその後色々と話そうよ」
…ッざけんな、テメェと話すことなん…か……
気持ちとは裏腹に重く下がってくる瞼にもはや抗うことが出来ず、彼はとても深くとても短い眠りに落ちた。
「ウらぁッ!」
深く短い眠りから覚め、勢いよく上半身を起こした異形の彼はその勢いのまま近くで座っていた翼の悪魔の右頬を殴った。
「だッ!?」
突如放たれた視覚外からの攻撃に翼の悪魔は反応することが出来ず、怨み籠もるその右拳をまともに頬に食らい身体ごと左方向へと吹き飛ぶ。そしてその後方にずっしりと大きく構える大木に背中からぶつかり、かるく血反吐を吐きながら地面へと崩れ落ちた。
と、思ったら鼻血を吹き垂らしながら起き上がり叫び始めた
「いきなり何をするんだ! 僕はねぇ争うつもりなんかなかったんだよ! ただ単に好奇心でキミに会いに来ただけなんだ! それなのにキミは自分の領域がどーのこーのと言いがかりをつけて僕に攻撃したり! どういう事なのか説明してもらおうかッ!」
…ん? コレは一体どういう状況だ?
6秒程と言う短い時間でも「深い眠りに落ちていてしまった」せいなのか曖昧な記憶を頼りに身体を起こした。深く短い眠りから目覚めたばかりの異形の彼は眼の前で怒鳴り散らす黒い悪魔を見詰め、未だに正常な思考を保てない頭をフル回転し考え込んだ。
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