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…あぁ、確かコイツが俺の場所に入ってきたから排除しようとしたんだっけ? その後争いになって眠らされたんだよな…?
ん? 眠らされた? 俺が? ……そうだった、強制的な眠気を誘う術を受けたんだ、…クソッむかつくけど仕方がねぇ、ヤツの術の効果が俺の抵抗力より上手だったってことか。潔ぎよく認めよう。
それにしても
鼻息荒いなコイツ。
「落ち着けよ。元はと言えばオマエが俺の領域に勝手に踏み込んで来た事が原因だろ? レイクピアで生きているのならその暗黙的な事くらい把握しておけよ」
自ら興奮を冷まし冷静になった異形の彼は、静かな口調で黒い翼の悪魔に冷たく言い放つ。
「そんな事言われてもねえ、僕はレイクピアのルールなんて知らないよ。だって僕は」
そこで黒い翼の悪魔は一旦息を飲み言葉を詰まらせたが軽く息を吸い吐いた後、覚悟を決めたかの様に言った。
「レイクピアの外側から来たんだから」
「…え?」
太陽は西に大きく傾き、赤く染まる夕日がレイクピアを照らす。レイクピア全体を真っ赤なヴェールで覆ったかの様なその鮮やかな色彩は、見た者を一瞬で虜にするような妖艶な美しさを放つ。
その妖艶な赤いヴェールに包まれながら、異なる姿の2人は互いを見据え微動だにしない。しかし、黒い翼の悪魔が落ち着いた様子で軽く笑みを浮かべる一方、異形の彼の両手は軽く震え全身から溢れ出る汗がポタポタと地面に落ちる。
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