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「…最後にもう一回だけ試してみるか」
地面に大の字で倒れていた彼はそう言いながら竹の棒を支えにし、疲労のせいで上手くいう事を利いてくれない両足に力を込めて立ちあがる。そして
「ふぅ~…」
大きく息を吐き「右手で印を結んだ後右手の掌を自らの身体に向け」呟いた。
「仙法術・強硬術・真鉄纏」
今回、彼が真鉄纏を掛けようと試みた対象は自身の身体だった。
どちらかの手で印を結ぶ、対象に印を結んだ手の掌を向ける、それが仙法術の発動条件となる。
しかし…
彼の身体が真鉄纏により7.2倍に強化されたその刹那、彼の持つ竹の棒に掛かっていた真鉄纏の効果が淡い光と共に失われ元の強度に戻ってしまった。
これは仙法術では「異なる対象に同じ効果を持つ術を掛けることが不可能」な為だった。
「畜生…やはり同時発動は無理なのか…」
今まで何度も何度も同時発動を試みたのであろう。今日も鍛錬の後に最後の力を振り絞り同時発動に挑戦してみたのだがやはり失敗に終わってしまった。
彼は両手で握る竹の棒を支えに肩で息をしながら悔しそうに舌打ちをした。そして全身の力を揺るめ仰向けで倒れこみ
深い眠りに付いた。
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